Colab、Colab Pro+、Colab Enterpriseを比較して解説 – G-gen Tech Blog

G-genの杉村です。Google Colaboratory、略称 Colab は、Google が提供する Jupyter ノートブックベースの開発環境サービスです。Colab には無料版、従量課金プラン、サブスクリプションプランである Colab Pro と Pro+、そして企業等の組織向けの Colab Enterprise があります。それぞれの違いやユースケースを解説します。

Google Colaboratory(以下、Colab)は、Web ブラウザから直接 Python コードを実行できる、Jupyter ノートブックベースの開発環境です。環境構築が不要で、GPU や TPU といったハードウェアアクセラレータも利用できる手軽さから、データ分析や機械学習の学習・研究目的で広く利用されています。

Colab には、無料プラン、従量課金(Pay As You Go)プラン、Colab Pro、Colab Pro+、そして Google Cloud のサービスとして提供される企業向けの Colab Enterprise があります。それぞれの違いは以下の通りです。

特徴 Colab 無料版 Colab 従量課金プラン Colab Pro / Pro+ Colab Enterprise
主な対象ユーザー 個人、学習者 個人、研究者 個人、研究者 企業、組織
提供形態 Google サービス Google サービス Google サービス Google Cloud サービス
課金体系 無料 従量課金 月額サブスクリプション 従量課金 (Google Cloud の請求先アカウント)
リソース 制限あり 使用分だけ支払 定量が割当 マシンタイプで柔軟に構成
バックグラウンド実行 なし なし Pro+ のみ可能 (最大24時間) 可能
セキュリティ・管理 Google アカウント Google アカウント Google アカウント Google アカウント、IAM、組織のポリシー、VPC Service Controls、CMEK など
Google Cloud 連携 限定的 限定的 限定的 BigQuery、Vertex AI などとシームレスに連携

原則的に、Colab の無料プラン、従量課金(Pay As You Go)プラン、Colab Pro、Colab Pro+ は、個人や研究者、小規模な分析チームなどに適しています。

一方で、企業などの組織が Colab を利用したい場合、Google Cloud と統合されており高度なアクセス管理等が可能な Colab Enterprise が推奨されます。Colab Enterprise へのアクセス管理は、Google Workspace や Cloud Identity で統合管理される Google アカウントをベースに行われます。Colab Enterprise では、以下のようなことが可能です。

  • 組織側でアカウントの管理を行う(Google Workspace / Cloud Identity)
  • Identity and Access Management(IAM)による詳細なアクセス管理
  • Google グループやドメイン全体へのアクセス権限付与
  • VPC Service Controls による接続元 IP アドレス制限
  • CMEK(顧客管理の暗号鍵)によるストレージ暗号化
  • BigQuery や Vertex AI と連携したデータ分析や AI 活用

企業等の組織で無料プランや Colab Pro 等を利用することもできますが、高度なアクセス管理機能はありません。作成したノートブックは Google ドライブに保存され、Google ドキュメントなどのファイルと同じように扱われます。

また、Colab Enterprise は Google Cloud プロジェクトに紐づいており、利用料金は Google Cloud の請求先アカウントに課金されます。通常の Google Cloud サービス同様、特別な手続きなく G-gen などの Google Cloud 販売パートナー経由で利用することも可能です(G-gen を含む一部の販売パートナーは、Colab Pro や Pro+ も再販可能です)。

無料版の Colab は、誰でもすぐに無料で Python の実行環境を手に入れられる点が最大のメリットです。

GPU や TPU も無料で利用できますが、割り当てられるリソースは保証されておらず、特に高性能な GPU が利用できるかは、そのときどきの Google のリソース状況に左右されます(有償プランの利用者が優先されます)。

また、長時間利用しない場合や、一定時間を超える処理を実行した場合にセッションが切断されるため、長時間の処理には向きません。

なお、作成したノートブックは、Google ドライブのマイドライブに保存されます。

これらから、無料版の Colab は主に、プログラミングの学習や、小規模なデータ分析、短時間で終わる機械学習モデルの実験などに適しています。

Colab 従量課金プラン(Pay As You Go プラン)は、無料版の各種制限を緩和する、個人向けの有料プランです。

コンピューティングユニットを必要な分だけ購入し、その分を Google に支払います。コンピューティングユニットとは、Colab の実行基盤(VM)の CPU、GPU、TPU などのコンピュートリソースを抽象化した単位です。

Colab 従量課金プランでは、コンピューティングユニットを100または500の単位で購入します。購入後は90日間有効で、必要に応じて追加購入できます。

作成したノートブックは、無料版と同様、Google ドライブのマイドライブに保存されます。

Colab 従量課金プランは、無料版とほぼ同じユースケースにおいて、より多くのリソースを使いたい場合に適しています。

Colab Pro と Colab Pro+ は、無料版の各種制限を緩和する、個人向けの有料サブスクリプションプランです。従量課金プランとの違いは、毎月定額の料金を支払うことで、所定のコンピューティングユニットが割り当てられる点です。コンピューティングユニットが足りなくなった場合、必要に応じて追加購入できます。

Colab Pro では100ユニット、Colab Pro+ では500ユニットのコンピューティングユニットを受け取ることができます(期間限定特典で、より多くのユニットが割り当てられることもあります)。コンピューティングユニットの単価は従量課金プランと同じですが、Colab Pro / Pro+ の特典として、より高性能な GPU(プレミアム GPU。型番はそのときにより異なる)やより多くのメモリが割り当てられます。

さらに Colab Pro+ では、バックグラウンド実行が可能になります。ブラウザを閉じても、ノートブックは最大24時間稼働します。これにより、より複雑なデータ処理、本格的な機械学習モデルのトレーニングが可能です。

なお、Colab Pro / Pro+ は再販が可能な販売パートナーもあります。G-gen の場合、G-gen 経由での Colab Pro / Pro+ の購入が可能です。

作成したノートブックは、無料版と同様、Google ドライブのマイドライブに保存されます。

Colab Pro / Pro+ は、従量課金プランよりもリソースが優遇(プレミアム GPU 等)されており、バックグラウンド実行も可能なことから、より本格的・日常的に Colab を利用する研究者、開発者、個人に適しています。ただしより大人数で組織的に使用する場合は、Colab Pro / Pro+ のセキュリティと統制機能では不足する可能性があるため、後述の Colab Enterprise を検討します。

Colab Enterprise は、前掲の個人向けプランとは異なり、企業や組織での利用に特化した Google Cloud のサービスです。Google Cloud のサービスとして、マネージドなノートブック環境が提供されます。

ノートブックの実行環境はランタイムと呼ばれ、様々なインスタンスタイプから選択でき、GPU もアタッチできます。ノートブックのスケジュール実行なども指定でき、任意の日時にノートブックを実行できます。

また Google Cloud と高度に統合されているため、以下のような高度なセキュリティも用いることができます。

  • 組織側でアカウントの管理を行う(Google Workspace / Cloud Identity)
  • Identity and Access Management(IAM)による詳細なアクセス管理
  • Google グループやドメイン全体へのアクセス権限付与
  • VPC Service Controls による接続元 IP アドレス制限
  • CMEK(顧客管理の暗号鍵)によるストレージ暗号化

BigQuery や Vertex AI と連携したデータ分析や AI 活用も可能です。ノートブックの実行ユーザーの認証情報を使用して、BigQuery や Vertex AI、Cloud Storage などの Google Cloud サービスの API に、ノートブック上のコードからアクセスできます。

なお作成したノートブックは、Google Cloud プロジェクトのリソースとして管理されます。無料版のように、Google ドライブのファイルとして扱われることはありません。

Colab Enterprise は、企業や官公庁、教育機関などの組織が統制を効かせて Colab を利用したいケースに適切です。

なお、Google Cloud で提供される他の Jupyter ノートブックサービスとして、Vertex AI Workbench があります。比較観点や詳細については、以下の記事も参照してください。

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杉村 勇馬 (記事一覧)

執行役員 CTO

元警察官という経歴を持つ IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。




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