イスラエルはGoogleとAmazonがデータを他国当局に渡さないよう極秘の取り決めをしていた – GIGAZINE


メモ


GoogleやAmazonのようにグローバルに展開するサービスは、さまざまな国の当局からデータ提供を求められる事態が発生します。しかし、データを渡したくないイスラエルは、GoogleやAmazonとの間で、データ引き渡しの要求があったときに秘密のコードで知らせを受けられるように取り決めをしていたことを、イスラエル・パレスチナ問題に取り組む独立系ニュースサイト「+972 Magazine」とヘブライ語ニュースサイトの「Local Call」、イギリス紙「The Guardian」が共同調査の結果として報じました。

Inside Israel’s deal with Google and Amazon
https://www.972mag.com/project-nimbus-contract-google-amazon-israel/


בלי מגבלות ועם “מנגנון קריצה”: החוזה של ישראל עם גוגל ואמזון – שיחה מקומית
https://www.mekomit.co.il/ps/157869/


Revealed: Israel demanded Google and Amazon use secret ‘wink’ to sidestep legal orders | US news | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2025/oct/29/google-amazon-israel-contract-secret-code


2021年、イスラエルはGoogleとAmazonから高度なクラウドコンピューティングサービスおよびAIサービスの提供を受ける12億ドル(約1850億円)の契約を結びました。この巨額の契約は「プロジェクト・ニンバス(Project Nimbus)」と呼ばれるもので、詳細は極秘ながら、Google社内の弁護士らが人権侵害につながる可能性があるものであると懸念していたことがわかっています。

Googleとイスラエルの1900億円規模の契約「Project Nimbus」が人権侵害につながることを社内弁護士らが懸念していたことが内部文書で発覚 – GIGAZINE

by Ryan Quick

The Guardianは、このプロジェクト・ニンバスの契約の最終版を含むイスラエル財務省の文書と、交渉に携わった関係者の証言を入手。契約で、イスラエルがGoogleとAmazonに対して、厳しい要求をしていたことを明らかにしました。

ひとつは、「たとえ利用規約に違反していても、イスラエルによるGoogleおよびAmazon製品の使用方法を制限できない」ということ。

もうひとつは、「イスラエル以外の国の裁判所がGoogleおよびAmazonのクラウドに保存されたイスラエル関連のデータを提出するよう要求してきた際、イスラエルに秘密裏に通知する」ということです。後者について、+972 Magazineは「事実上、法的義務を回避できる仕組みになっている」と述べています。

契約は、ハマスがイスラエルへ大規模な攻撃を仕掛けるより2年も前に結ばれていますが、この時点でイスラエル側の担当者は、将来的に技術利用を巡ってGoogleとAmazonが訴訟に直面する可能性を予期していたとみられます。懸念されたシナリオの1つは、イスラエルによる製品使用がパレスチナ人に対する人権侵害と関連付けられた場合に、事業展開国の裁判所が捜査支援のためにイスラエルのデータを引き渡すよう要求するケースです。

GoogleとAmazonがイスラエルに秘密裏に合図する仕組みは「ウィンク・メカニズム」と表現され、国際電話で用いられる国別コードを利用した4桁の送金で機能していました。たとえば、アメリカの当局から要請があった場合、GoogleやAmazonはイスラエルに対して、アメリカの国番号「1」を用いて「1000シェケル(約4万7400円)」を送金するというわけです。日本なら国番号が81なので8100シェケル(約38万4000円)、アイルランドだと国番号が353なので3530シェケル(約16万7000円)となります。国際電話の国番号の場合、このような4桁表記にした場合に重複する番号はないので、これだけで「どの国からか」が特定可能です。なお、引き渡し要求があったことを伝えられなかった場合、GoogleとAmazonは24時間以内にイスラエルに10万シェケル(約474万円)を支払う義務があるとのこと。

The Guardianは、アメリカの法律では当局による協力要請があった場合に、その情報を当事者に伝えることは禁止されているため、「ウィンク・メカニズム」は違法であると指摘しています。

イスラエル財務省の報道官は「イスラエルが企業に法律違反を強制しているという記事には根拠がない」と反論。Googleの広報担当者も「アメリカの企業として、法的義務を回避するという発想は間違っている」と報道内容を否定しました。同様に、Amazonの広報担当者も「顧客のデータを求めるリクエストに対する合法的かつ拘束力のある厳格なグローバルプロセスがあり、機密保持義務を回避するようなプロセスは整備されていません」と述べています。

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