とうとうWindows 10のサポートが終了した。まだがんばってWindows 10を使っているであろう人も、さすがにWindows 11への移行を考えているはずだ。特に2011年に登場したSandy Bridgeは人気があったため、このあたりのWindows 11にアップグレードできない環境で粘ってきた人は多いかもしれない。
いやいや、性能的にまだまだ戦えるマシンだし、と思うかもしれないが、Sandy Bridge世代のミドルレンジCPUだった「Core i5-2500K」は、現在のエントリークラスCPUの代名詞と言える「Intel N100」にすら勝てないのをご存じだろうか?それにSandy Bridge比で言えば、5万円前後で購入できるミニPCのほうがおおよそ4倍以上もCPUパワーがあるのだ。
本稿では、Windows 10の古い環境を使っている人を想定し、現在の低価格PCに対してどれくらい性能差があるのかを明らかにしていきたい。
Sandy Bridgeもついに使い続けるのは難しくなった
Sandy Bridgeこと、第2世代Coreプロセッサが発売されたのは2011年1月9日。驚異的な円高の時期と重なり、発売時に最上位だったCore i7-2600Kは2万9,000円前後(1,000個ロット時単価は317ドル)という手頃な価格で高性能だったことから爆発的なヒットになった。
それからもう10年以上が経っているが、その間に筆者が関わっていた自作PC誌「DOS/V POWER REPORT」で、“Sandy Bridgeからの乗り換え”を題材にした記事を何度書いたか分からないほどであり、如何に所有者が多かったかが分かるだろう。
しかし、Sandy Bridgeもついに終わるとときがきた。Windows 10のサポートが終了し、Windows 11に非対応のSandy Bridge環境を使い続けるのはセキュリティ面のリスクが高いからだ。
2011年よりもPCパーツの価格は全体的に上昇、しかも円安という状況では乗り換えに躊躇してしまうと考える人もいるだろう。いくら2011年に何十週もランキングの1位と2位を独占し続けたCore i7-2600KとCore i5-2500Kと言えども、12世代以上も前のCPUだ。4コアしかなく、対応メモリはDDR3なので低速、PCIeも2.0なのでデータ転送速度も遅いとあらゆる面で現在とは見劣りしてしまう。当然M.2スロットも存在しない時代だ。
つまりビデオカードが決め手となるゲーミング性能はともかく、シンプルにCPUパワーを使う処理やオフィスワークであれば現在のエントリークラスでも同じかそれ以上に快適な環境が手に入る。低価格のノートPCやミニPCがWindows 11への十分な移行先と言えるのだ。
という前置きが入ったところで、 今回はSandy BridgeからCore i7-2600KとCore i5-2500K、性能の比較用としてCPUにIntel N100を搭載するノートPC、Ryzen 5 7545Uを搭載するミニPCを用意した。 まずは、CPUスペックの違いから見ていこう。
| CPU | Core i7-2600K | Core i5-2500K | Intel N100 | Ryzen 5 7545U |
|---|---|---|---|---|
| アーキテクチャ | Sandy Bridge | Sandy Bridge | Alder Lake | Zen 4/Zen 4c |
| 製造プロセス | 32nm | 32nm | Intel 7(10nm) | TSMC 4nm |
| 対応ソケット | LGA1155 | LGA1155 | FCBGA1264 | FP7 |
| コア数 | 4 | 4 | 4 | 6 |
| スレッド数 | 8 | 4 | 4 | 12 |
| 定格クロック | 3.4GHz | 3.3GHz | - | 3.2GHz |
| 最大ブーストクロック | 3.8GHz | 3.7GHz | 3.4GHz | 4.9GHz |
| 3次キャッシュ | 8MB | 6MB | 6MB | 16MB |
| 対応メモリ | DDR3-1333 | DDR3-1333 | DDR4-3200/DDR5-4800/LPDDR5-4800 | DDR5-5600/LPDDR5-7500 |
| PCI-Express | 2.0/16レーン | 2.0/16レーン | 3.0/8レーン | 4.0/14レーン |
| TDP | 95W | 95W | 6W | 28W |
| 内蔵GPU | HD Graphics 3000 | HD Graphics 3000 | UHD Graphics | Radeon 740M |
比較するのはモバイル向けのCPUだ。注目はエントリー向けノートPCやミニPCでの採用例が多いIntel N100だろう。Alder Lakeは性能重視のPコアと効率重視のEコアで構成されるが、N100はEコアだけを4基備えたもの。TDPはわずか6Wだ。コア数とスレッド数はCore i5-2500Kと並ぶだけに、実際のベンチマークではどうなるか見どころだ。
Ryzen 5 7545UはZen 4コアが2基、電力効率の高いZen 4cコアが4基、合計6コア12スレッドで構成されるCPUだ。コア数、動作クロックともCore i7-2600Kを大きく上回り、メモリやPCIeと言ったいわゆる足回りも高速だ。どこまでの差になるか注目したい。
| 製品名 | 自作PC | CHUWI GemiBook XPro | MINISFORUM UM750L Slim |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i7-2600K/Core i5-2500K | N100 | Ryzen 5 7545U |
| メモリ | DDR3-1333 32GB | LPDDR5-4800 8GB | LPDDR5-6400 16GB |
| ストレージ | SATA SSD 1TB | M.2 SSD 256GB | M.2 SSD 1TB |
| グラフィックス | GeForce GTX 1060 | UHD Graphics | Radeon 740M |
| OS | Windows 10 Pro(22H2) | Windows 11 Pro(24H2) | Windows 11 Pro(24H2) |
まずはシンプルなCPUパワーのテストで比較
ここからはベンチマークで性能比較を行なっていく。まずはCPUパワーを見ていこう。CGレンダリングでCPU性能を測定する「Cinebench R23」と「HandBrake」を使用して約3分の4K動画をフルHD解像度にH.264とH.265形式にエンコードする時間を測定する。
ちなみに、最新のCinebench 2024を使わない理由は、単純にSandy BridgeのCPUが動作に必要な「AVX2」という命令セットに対応していないためだ。
CPUコアの性能
Cinebench R23で 全コアに負荷がかかるMulti Coreのテストで注目は、Core i5-2500KがN100に勝てないこと。1コアだけのSingle Coreのテストでは、Core i7-2600Kも負けている。 わずかTDP 6WのCPUがコア単体の性能ではSandy Bridgeを上回ると、時代の流れを強烈に感じる部分だ。
Ryzen 5 7545Uは、Multi CoreでCore i7-2600Kの約3.2倍、Core i5-2500Kの約4.2倍というスコア。コア数は2コアしか変わらないのにスコアの差は大きい。アーキテクチャの進化がよく分かるというものだ。
アプリの処理ではどうなる?
続いて、一般的な処理PCの基本性能を測る「PCMark 10」、Microsoft OfficeとEgdeブラウザを実際に動作させてさまざまな処理を行なう「PCMark 10 Applications」を試そう。
システム性能
PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動のEssentials、表計算/文書作成のProductivity、写真や映像編集のDigital Content Creationで構成されるが、 ここではN100よりもSandy BridgeのCPUが上回った。アプリや処理によってはN100を上回れるということだろう。 その一方でRyzen 5 7545Uは、総合スコアのStandardがSandy Bridgeの約1.4倍と強さを見せている。
5万円のミニPCで性能は飛躍的にアップする
Windows 10のサポート終了でSandy Bridgeはついに終焉を迎えると言ってよいだろう。もちろん、Linuxなど別のOSで運用するという手もあるが、これまでのソフトウェア資産を生かすならWindows 11への移行が一番なのは間違いない。
オフィスワークであれば3万円台のN100搭載ノートPCでも十分移行先となり得る。5万円のミニPCなら快適度は飛躍的に向上だ。Sandy Bridgeは自作の歴史に燦然と輝く名作なのは間違いないが、それは美しい思い出として胸にしまいWindows 11の世界へと行こうではないか。










